【事例付き】和風店舗の内装費用は1.5倍?適した業態と費用を抑える4つのコツをで解説 【事例付き】和風店舗の内装費用は1.5倍?適した業態と費用を抑える4つのコツをで解説
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【事例付き】和風店舗の内装費用は1.5倍?適した業態と費用を抑える4つのコツを解説

admin

和の趣を取り入れた店舗デザインは、幅広い世代から根強い支持を集めています。全国の飲食店約67万店のうち、和食店は約9万店と全体の13%を占め(※1)、美容室でも和モダンテイストを取り入れる店舗が増加傾向にあります。

しかし、和風な内装は素材選定や職人技術が必要となるため、通常の内装工事と比べて坪単価が1.3〜1.5倍程度高くなる傾向があります。また、業態によって和風デザインとの相性が大きく異なるため、自店舗に本当に適しているかの見極めが重要です。

本記事では、多数の和風店舗デザインを手がけてきた株式会社RAWMANが、和風内装が向いている業態の選び方から費用相場、設計時の注意点まで実例とともに解説します。

※1 総務省「経済センサス-活動調査」(2021年)

和風な店舗の内装とは?和モダンとの違いも解説

日本の伝統的な素材や意匠を取り入れた空間デザイン

天日の事例

和風な店舗の内装とは、日本の伝統的な素材や建築様式、意匠を取り入れた空間デザインを指します。具体的には、天然木材(ヒノキ・ケヤキ・スギなど)、竹、和紙、畳、漆喰といった自然素材を使用し、格子や障子、左官仕上げなどの伝統的な技法を取り入れた内装です。

これらの素材や技法は、単なる装飾としてではなく、日本人が古くから自然と調和しながら暮らしてきた美意識を体現するものです。木の温もりや畳の香り、和紙を通した柔らかな光といった五感に訴える要素が、来店客に安らぎと特別感を与えます。

また、和風内装の特徴として「引き算の美学」があります。過度な装飾を避け、素材そのものの質感を活かしたシンプルなデザインが、かえって洗練された印象を生み出します。この「余白」を大切にする考え方は、現代の店舗デザインにおいても重要な要素となっています。

「和風」と「和モダン」の違い

【事例3】鮨 漆黒(東京・14.9㎡):小規模でも高級感を実現した設計
鮨 漆黒の事例

和風と和モダンは混同されがちですが、明確な違いがあります。

和風は、伝統的な日本建築の様式を忠実に再現したスタイルです。畳敷きの座敷、襖や障子、床の間といった伝統的な要素を中心に構成され、古き良き日本の情緒を重視します。料亭や老舗の和菓子店などで見られる、格式高い雰囲気が特徴です。

一方、和モダンは、和の要素と現代的なデザインを融合させたスタイルです。伝統的な素材(木材・和紙・石など)を使いながらも、スタイリッシュな家具やガラス、金属などの現代的な素材を組み合わせます。畳を使う場合も、正方形の縁なし畳を市松模様に配置するなど、モダンな印象を加えることが多いです。

和風が「伝統の継承」を重視するのに対し、和モダンは「伝統の進化」を目指すスタイルと言えるでしょう。どちらを選ぶかは、店舗のコンセプトやターゲット層によって判断する必要があります。

和風内装が選ばれる3つの理由

天日の事例

1. 幅広い世代に受け入れられる普遍性

和風デザインは、若年層から高齢層まで幅広い世代に好まれる普遍性があります。特に30代以上の層からは「落ち着く」「安心感がある」と高い支持を得る傾向にあり、リピート率向上にも寄与します。

2. 高級感と特別感の演出

天然木材や左官仕上げといった素材は、それ自体が高級感を醸し出します。同じ価格帯の料理やサービスでも、内装が和風であることで顧客は「特別な体験」と認識しやすく、客単価の向上にもつながる可能性があります。

3. ブランディングと差別化

飲食店や美容室が乱立する現代において、和風内装は明確な差別化要素となります。特に訪日外国人観光客(インバウンド)にとっては、「日本らしさ」を体験できる貴重な空間として高く評価されます。

和風な内装が向いている業態・向いていない業態

【向いている業態】日本文化との親和性が高い店舗

鮨 無垢の事例

和風内装が最も力を発揮するのは、提供する商品やサービスそのものが日本文化と深く結びついている業態です。

寿司店・和食店

寿司や懐石料理といった和食は、和風内装との相性が抜群です。カウンター越しに職人の技を見せる寿司店では、ヒノキやケヤキの一枚板カウンターが職人の技術と相まって、非日常の体験を演出します。特に高級路線の店舗では、内装の質が料理の価値を高める重要な要素となります。

日本酒バー・居酒屋

日本酒や焼酎を中心に扱う店舗も、和風内装との親和性が高い業態です。木の温もりと間接照明が作り出す落ち着いた空間は、じっくりとお酒を楽しむ雰囲気に最適です。

和菓子店・茶房

和菓子の繊細な美しさを引き立てるには、和風内装が欠かせません。特に季節感を大切にする和菓子店では、内装にも四季の移ろいを感じさせる要素を取り入れることで、商品の価値がさらに高まります。

美容室・エステサロン

意外かもしれませんが、美容室やエステサロンでも和風・和モダンテイストの内装が増えています。特に「癒し」や「リラクゼーション」を重視するサロンでは、木材や和紙を使った落ち着いた空間が顧客満足度を高めます。

【事例】鮨 みつよし(東京・66.4㎡):けやきの一枚カウンターが主役の和空間

鮨みつよしの事例

鮨 みつよしは、東京都新宿御苑前に位置する約66.4㎡(約20坪)の寿司店です。この店舗では、2つの異なる空間を持つ構成が特徴となっています。

メイン客席はけやきの一枚カウンターを主役に、ベージュを基調とした左官とタイルで構成されています。網代天井と木格子障子を組み合わせることで、落ち着きのある和の空間を実現しました。

【向いている業態】落ち着いた雰囲気を重視する店舗

鮨 かぐらの事例

和風内装は、顧客にゆったりとした時間を過ごしてもらいたい業態にも適しています。

高級寿司店以外の飲食店

接待や記念日利用を想定した飲食店では、和風内装が「特別感」を演出します。個室を設ける場合も、障子や格子で仕切ることで、プライバシーを守りながら圧迫感を与えない空間設計が可能です。

スパ・リラクゼーション施設

心身のリラックスを目的とする施設では、自然素材を使った和風内装が効果的です。木の香りや和紙の柔らかな光が、副交感神経を優位にし、深いリラクゼーション状態を促します。

旅館・ホテルのラウンジ

宿泊施設のラウンジやロビー和風要素を取り入れることで、「日本の宿」としてのアイデンティティを明確に打ち出せます。特にインバウンド需要が見込める施設では、和風デザインが大きな魅力となります。

【事例】天日(神奈川・154.74㎡):木を基調としたモダンな日本酒専門店

天日の事例

天日は、神奈川県厚木市に位置する約154.74㎡(約46.81坪)の日本酒専門店です。「日本酒原価酒蔵」を手掛けるグループの新業態として、日本酒と本格和食を楽しめる個室居酒屋として展開されています。

内装は木を基調としたモダンな和空間となっており、完全個室と半個室席を組み合わせることで、様々なシーンに対応できる設計となっています。暖簾で仕切られた半個室席は、気軽な飲み会に最適で、完全個室は接待や記念日利用に適しています。

50種類以上の日本酒を驚きの価格で提供するというコンセプトに合わせ、内装も日本酒文化を体現する和の要素を取り入れながら、若い層にも親しみやすいモダンなテイストを加えています。このバランス感が、幅広い顧客層の獲得につながっています。

【向いていない業態】回転率重視やカジュアル路線の店舗

立ち喰い鮨 浩也の事例

一方で、和風内装が必ずしも適さない業態も存在します。

ファストフード・回転率重視の飲食店

ラーメン店や牛丼店など短時間での食事と高い回転率を前提とする業態では、和風内装のコストに見合うメリットが得られにくい傾向にあります。また、カジュアルで気軽な雰囲気を重視する店舗では、和風の落ち着いた雰囲気がかえってミスマッチとなる可能性があります。

洋風・エスニック料理店

イタリアンやフレンチ、タイ料理やインド料理など料理のルーツと内装のテイストが大きく異なる場合、顧客に違和感を与える恐れがあります。ただし、和モダンの要素を部分的に取り入れることで、独自性を出すことは可能です。

若年層ターゲットのトレンド重視店舗

10代〜20代前半をメインターゲットとし、SNS映えや最新トレンドを重視する店舗では、和風よりもポップでカラフルな内装の方が適している場合が多いでしょう。ただし、和モダンスタイルであれば、若年層にも受け入れられる可能性はあります。

一般的な内装と比較した和風内装の費用相場

坪単価で見る費用の違い(スケルトン物件の場合)

【事例1】BLONDE(東京・60.02㎡):モダンで洗練された空間デザイン
BLONDEの事例

スケルトン物件における内装工事の坪単価を、一般的な内装と和風内装で比較してみましょう。

一般的な店舗内装(スケルトン物件)

店舗デザイン.COMの調査によると、一般的な店舗内装の坪単価中央値は47.9万円となっています(※2)。業態別では以下の通りです。

  • 飲食店:坪単価中央値56.4万円
  • サービス・美容室:坪単価中央値37.5万円
  • 物販・アパレル:坪単価中央値36.1万円

※2 株式会社シンクロ・フード「店舗の内装工事費用の相場」(2024年)

和風内装の店舗(スケルトン物件)

和風内装の場合、一般的な内装と比較して約1.3〜1.5倍の費用がかかります。具体的には以下のような坪単価となります。

  • 和風飲食店:坪単価70万円〜85万円程度
  • 和風美容室・サロン:坪単価50万円〜60万円程度

例えば、20坪の和風飲食店をスケルトンから作る場合、以下のような費用感になります。

  • 一般的な内装:56.4万円 × 20坪 = 約1,128万円
  • 和風内装:75万円 × 20坪 = 約1,500万円
  • 差額:約370万円

この差額は決して小さくありませんが、和風内装がもたらすブランディング効果や顧客単価の向上を考えれば、長期的には投資に見合う価値があると言えるでしょう。

坪単価で見る費用の違い(居抜き物件の場合)

鮨 くにみつの事例

居抜き物件の場合、前テナントが残した設備や内装をどの程度活用できるかで費用は大きく変動します。

一般的な店舗内装(居抜き物件)

一般的な居抜き物件の内装工事費用は、坪単価15万円〜50万円程度です。前テナントと同業態であれば、設備をそのまま活用できるため費用を大幅に抑えられます。

和風内装の店舗(居抜き物件)

和風内装の居抜き物件の場合、前テナントも和風店舗であれば坪単価20万円〜65万円程度で抑えられる可能性があります。しかし、前テナントが洋風店舗だった場合は、ほぼスケルトンからの工事と同等の費用がかかります。

居抜き物件で和風内装を実現する際の注意点として、以下が挙げられます。

前テナントの内装をそのまま活用できるケース

  • 前テナントが和食店・寿司店など和風店舗だった場合
  • 木材を使ったカウンターや座敷が残っている場合
  • 和風の照明器具や建具が再利用できる場合

このようなケースでは、部分的な改装のみで済むため、坪単価20万円〜40万円程度に抑えられます。

ほぼスケルトン同等の工事が必要なケース

  • 前テナントが洋風店舗だった場合
  • 内装材や設備が和風テイストと相容れない場合
  • 劣化が激しく、全面的な改装が必要な場合

このようなケースでは、居抜き物件のメリットが活かせず、スケルトンとほぼ同等の坪単価65万円〜80万円程度がかかります。

和風内装で費用が高くなる3つの理由

天ノ恵の事例

なぜ和風内装は一般的な内装と比べて費用が高くなるのでしょうか。主な理由は以下の3つです。

1. 天然素材の材料費が高い

和風内装で使用される天然木材(ヒノキ・ケヤキ・スギなど)は、合板やプリント化粧板と比較して材料費が高額です。特に一枚板のカウンターや銘木を使用する場合、その差は顕著になります。

  • ヒノキの一枚板カウンター:1mあたり10万円〜30万円
  • 一般的な人工大理石カウンター:1mあたり3万円〜8万円

また、漆喰や珪藻土などの左官仕上げも、ビニールクロスと比べて材料費・施工費ともに高くなります。

2. 職人の技術料が必要

左官仕上げや建具の製作、木材の加工など、和風内装には専門的な技術を持つ職人の手仕事が必要です。特に格子や障子といった伝統的な建具は、既製品では対応できないケースが多く、オーダーメイドで製作することになります。

職人の高齢化により、こうした技術を持つ職人の数が減少しているため、技術料も上昇傾向にあります。

3. 施工期間が長くなる

天然素材を使った左官仕上げは、下地処理から仕上げまで複数の工程が必要で、それぞれに乾燥時間を要します。また、木材も湿度管理をしながら施工する必要があるため、一般的な内装工事と比べて工期が長くなります。

工期が長くなればその分人件費も増加し、結果として総費用が高くなります。

コストを抑えながら和の雰囲気を出す工夫

二ノ宮の事例

和風内装は費用が高いとはいえ、工夫次第でコストを抑えることは可能です。

【コツ1】見える部分と見えない部分でメリハリをつける

顧客の目に触れるカウンターや壁面には上質な天然木材や左官仕上げを使い、バックヤードや見えない部分は一般的な素材で仕上げるという方法です。

例えば

  • カウンター表面:ヒノキ一枚板(高級素材)
  • カウンター内側:合板(一般素材)
  • 客席側の壁:漆喰仕上げ(高級仕上げ)
  • バックヤードの壁:ビニールクロス(一般仕上げ)

このメリハリをつけることで、体感的な和の雰囲気は保ちながら、総費用を20〜30%程度抑えられます。

【コツ2】和モダンスタイルで現代的な素材も取り入れる

純粋な和風ではなく和モダンスタイルを選ぶことで、コストを抑えられます。例えば、全面を木材で仕上げるのではなく、一部にコンクリート打ちっぱなしやガラスといった現代的な素材を組み合わせることで、材料費を削減できます。

また、既製品の照明器具でも、和風テイストのものを選べば雰囲気を損なうことなく、オーダーメイドよりも大幅にコストダウンできます。

【コツ3】居抜き物件を活用する

前述の通り、前テナントが和風店舗だった居抜き物件を選べば、既存の内装や設備を活用できるため大幅なコストダウンが可能です。

特に以下のような設備が残っていると有利です。

  • 木製カウンター
  • 座敷(畳・床の間)
  • 和風照明器具
  • 格子や障子などの建具

ただし、前テナントのイメージが強く残っている場合や、設備の劣化が激しい場合は、かえって費用がかさむこともあるため、物件選定時に専門家の意見を聞くことをおすすめします。

【コツ4】シンプルなデザインを心がける

和の美学の基本は「引き算」です。過度な装飾を避け、素材の質感を活かしたシンプルなデザインにすることで、使用する材料の量を減らし、コストを抑えられます。

例えば、壁一面に木材を貼るのではなく、一部分にアクセントとして使用する方法です。少ない素材でも効果的に配置することで、十分に和の雰囲気を演出できます。

和風な店舗の内装デザインで押さえたい5つのポイント

【ポイント1】天然木材の選定:樹種による印象の違い

【事例2】鮨 みつよし(東京・66.4㎡):素材感を活かした和モダンデザイン
鮨 みつよしの事例

和風内装において、木材選びは最も重要な要素です。樹種によって色味・木目・香り・硬さが異なり、店舗の印象を大きく左右します。

ヒノキ(檜)

  • 特徴:清潔感のある白木、爽やかな香り
  • 用途:カウンター、壁材、天井材
  • 印象:上品で清潔感がある。寿司店に最適
  • 価格:高級(坪単価への影響:+15〜25万円)

ケヤキ(欅)

  • 特徴:力強い木目、重厚感
  • 用途:カウンター、テーブル、柱
  • 印象:風格があり、格式高い雰囲気
  • 価格:高級(坪単価への影響:+20〜30万円)

スギ(杉)

  • 特徴:柔らかな質感、温かみのある色味
  • 用途:壁材、天井材、床材
  • 印象:温もりがあり、親しみやすい
  • 価格:中級(坪単価への影響:+8〜15万円)

イチョウ(銀杏)

  • 特徴:明るい黄色味、均一な木目
  • 用途:カウンター、まな板
  • 印象:明るく華やか
  • 価格:中〜高級(坪単価への影響:+12〜20万円)

木材選定のポイントは、店舗のコンセプト予算のバランスです。高級路線の寿司店であれば、ヒノキやケヤキの一枚板カウンターが説得力を持ちますが、カジュアルな居酒屋であればスギでも十分に和の雰囲気を演出できます。

【ポイント2】配色計画:料理や施術を引き立てる色使い

立喰い鮨 浩也
立喰い鮨 浩也の事例

和風内装の配色は、「主役を引き立てる脇役」としての役割を意識することが大切です。

基調色の選び方

和風内装の基調色は、以下のような落ち着いた色がおすすめです。

  • ベージュ・アイボリー:温かみがあり、料理の色を邪魔しない
  • グレー:モダンな印象。和モダンに最適
  • 白:清潔感が高い。寿司店・和菓子店に適している
  • 墨色(濃いグレー〜黒):高級感を演出。バーや個室に効果的

アクセントカラーの使い方

基調色だけでは単調になりがちなため、アクセントカラーを効果的に使います。

和風に合うアクセントカラー

  • 藍色:日本の伝統色。落ち着いた品格
  • 朱色:エネルギッシュで華やか。居酒屋に適している
  • モスグリーン:自然との調和。リラクゼーションサロンに最適
  • 金色・真鍮色:高級感の演出。照明器具や建具の金具に

ただし、アクセントカラーは全体の5〜10%程度に抑えることが重要です。使いすぎると落ち着きのない空間になってしまいます。

飲食店における配色の注意点

飲食店では、料理を美しく見せることが最優先です。赤や黄色といった暖色系の料理が多い和食では、内装は料理と競合しない落ち着いた色を選びましょう。

特に寿司店では、ネタの色を正確に見せるため、色温度にも配慮が必要です(後述の照明の項目で詳述)。

【ポイント3】照明の工夫:和紙や行灯で柔らかな光を演出

日本酒原価酒蔵 SHIBUYAの事例

和風内装において、照明は空間の印象を決定づける重要な要素です。

色温度の選び方

照明の色温度(ケルビン/K)によって、空間の印象は大きく変わります。

  • 2700K〜3000K:温かみのある電球色。リラックス空間に最適
  • 3500K〜4000K:自然な白色。料理の色を正確に見せたい場合に適している
  • 5000K以上:青白い昼光色。和風には不向き

一般的な和風店舗では、2700K〜3000Kの温かみのある色温度がおすすめです。ただし、寿司店では料理の色を正確に見せるため、3000K前後のやや明るめの設定が望ましいでしょう。

間接照明の効果

和風内装では、直接照明よりも間接照明を多用することで、柔らかく落ち着いた雰囲気を作り出せます。

間接照明の配置例

  • 天井の梁を照らす
  • 壁面の和紙や左官仕上げを浮かび上がらせる
  • 床の間や飾り棚をスポット的に照らす
  • カウンター下部を照らし、足元に奥行きを出す

和風照明器具の選定

和紙を使った照明器具や、行灯型のペンダントライトは、和の雰囲気を効果的に演出します。ただし、オーダーメイドは高額になるため、既製品でも和風テイストのものを選ぶことでコストを抑えられます。

照明計画注意点として、飲食店では料理を美味しそうに見せる演色性(Ra値)重要です。Ra90以上の照明を選ぶことで、料理の色を自然に再現できます。

【ポイント4】建具と間仕切り:格子や障子で視線をコントロール

二ノ宮の事例

和風内装の特徴的な要素である格子や障子は、単なる装飾ではなく、視線のコントロールという重要な役割を担っています。

格子(こうし)の効果

木製の格子は、空間を完全に遮ることなく、適度な目隠し効果を生み出します。

格子の活用例

  • 入口付近:店内が丸見えにならないよう、緩やかに視線を遮る
  • 個室の間仕切り:プライバシーを守りつつ、圧迫感を与えない
  • カウンター背面:厨房への視線を調整しながら、開放感を保つ

格子のデザインは、縦格子・横格子・井桁格子など様々なパターンがあり、それぞれ印象が異なります。縦格子は空間を高く見せ、横格子は落ち着いた印象を与えます。

障子の現代的アレンジ

伝統的な障子は和紙を使いますが、現代の店舗では以下のようなアレンジも有効です。

  • 和紙の代わりにアクリル板:メンテナンス性向上
  • 框(かまち)のみを木製にし、中をガラスに:視界を確保しつつ和の雰囲気を保つ
  • 半透明のポリカーボネート:光を通しつつ目隠し効果

暖簾(のれん)の活用

暖簾も、和風店舗における重要な間仕切り要素です。布製のため格子や障子よりも柔らかな印象を与え、通り抜けも容易です。

暖簾の活用例

  • 入口:店舗の顔として、屋号を染め抜く
  • 半個室の仕切り:緩やかにプライベート空間を作る
  • 厨房との境界:動線を妨げずに視線を遮る

【ポイント5】和のディテール:左官仕上げや畳で個性を表現

浩也 東京前の事例

和風内装の個性を決定づけるのが、細部のディテールです。

左官仕上げの種類と特徴

左官仕上げは、職人の手仕事による独特の質感が魅力です。

主な左官材料

  • 漆喰(しっくい):白く美しい仕上がり。調湿効果あり
  • 珪藻土(けいそうど):調湿・消臭効果が高い。色のバリエーション豊富
  • 墨モルタル:黒やグレーの落ち着いた色味。モダンな印象

左官仕上げは、コテの跡を活かした「塗り跡仕上げ」や、平滑に仕上げる「鏡面仕上げ」など、仕上げ方によっても印象が変わります。

左官仕上げのメリット

  • 独特の質感と温かみ
  • 調湿効果による快適な空間
  • 個性的な表現が可能

左官仕上げのデメリット

  • 施工費が高い(ビニールクロスの2〜3倍)
  • 施工期間が長い(乾燥時間が必要)
  • ひび割れのリスク

畳の現代的活用

畳は和風内装の代表的な要素ですが、現代の店舗では以下のような使い方が効果的です。

  • 縁なし畳(琉球畳):正方形の畳を市松模様に配置。モダンな印象
  • カラー畳:グレーや黒など、落ち着いた色の畳。和モダンに最適
  • 置き畳:必要に応じて畳スペースを作れる柔軟性

ただし、飲食店で畳を使用する場合は、汚れやすく傷みやすいため、メンテナンス性を考慮する必要があります。高頻度で使用するエリアには不向きな場合もあります。

その他の和のディテール

  • 床の間:高級店では格式を示す要素として有効
  • 掛け軸・生け花:季節感の演出
  • 石材:玄関や坪庭に使用することで、自然との調和を表現
  • :壁面装飾や照明のシェードとして活用

これらのディテールは、すべてを取り入れる必要はありません。店舗のコンセプトに合わせて1〜2つを効果的に配置することで、洗練された和空間が完成します。

RAWMANが手がけた和風店舗の内装事例

【事例1】鮨 四心(東京・56㎡):真鍮色がアクセントの和newスタイル

ヒント②飲食店「鮨 四心」:素材感で温もりと高級感を演出する内装
鮨 四心の事例

鮨 四心は、東京都港区六本木一丁目に位置する約56㎡(約17坪)の寿司店です。「今までにないモダンな鮨店」をテーマにデザインしました。

壁面には白を基調としたタイルを使用し、真鍮色をアクセントとして配することで、和のnewスタイルを創造しています。華やかな和食を提供する店舗イメージを、内装でも表現しました。

伝統的な寿司店の枠を超えた現代的な空間デザインは、新しい寿司体験を求める顧客層に支持されています。白×真鍮という配色は、和風でありながら洗練された都会的な印象を与え、六本木という立地にもマッチしています。

【事例2】鮨 漆黒(東京・14.9㎡):黒で統一した静寂の空間

【事例3】鮨 漆黒(東京・14.9㎡):小規模でも高級感を実現した設計
鮨 漆黒の事例

鮨 漆黒は、東京都港区六本木に位置するわずか14.9㎡(約4.5坪)という小規模店舗です。「静寂の空間」をテーマに、壁面と天井、カウンター天板など、カラースキームをほぼ黒で統一しました。

周囲が暗いため、自然と視線が向かうのはカウンターにぼんやりと照らされた鮨。心地よい静寂に包まれ、鮨と向き合うための贅沢な没入空間をイメージしてデザインしています。

小さな空間だからこそ実現できる、研ぎ澄まされた集中力を促す空間設計は、限られた面積でも高級寿司屋としての価値を十分に表現できることを示しています。黒という大胆な色使いが、かえって鮨の色を引き立て、食材の美しさを際立たせます。

【事例3】日本酒原価酒蔵 SHIBUYA(東京・68.38㎡):日本酒文化を体現する和空間

日本酒原価酒蔵 SHIBUYAの事例
日本酒原価酒蔵 SHIBUYAの事例

日本酒原価酒蔵 SHIBUYAは、東京都渋谷区に位置する約68.38㎡(約20.7坪)の日本酒専門店です。「日本酒を原価で提供する」という革新的なコンセプトを、和風内装で表現しました。

日本酒をメインに扱う店舗として、内装にも日本文化を感じさせる要素を随所に配置しています。木を基調とした温かみのある空間は、日本酒の持つ繊細な味わいを楽しむのに最適な環境を作り出しています。

カジュアルな価格設定ながら、内装には和の品格を持たせることで、「安いだけではない、本格的な日本酒を楽しめる店」というブランディングに成功しています。

【事例4】浩也 東京前(東京・46.48㎡):伝統とモダンが融合した寿司店

浩也 東京前の事例

浩也 東京前は、東京に位置する約46.48㎡(約14.08坪)の寿司店です。店名に「東京前」とあるように、江戸前寿司の伝統を大切にしながら、現代的な要素も取り入れた内装となっています。

カウンターを中心とした空間設計は、職人との距離を近く保ちながら、ライブ感のある食事体験を提供します。木材の温もりと照明の工夫により、落ち着いた雰囲気の中で寿司を楽しめる空間を実現しました。

伝統的な要素とモダンな要素のバランスが絶妙で、幅広い年齢層の顧客に受け入れられる内装デザインとなっています。

和風内装で失敗しないための3つの注意点

コンセプトとターゲット層を明確にする

二ノ宮の事例

和風内装を成功させるための第一歩は、明確なコンセプト設定です。

避けるべき失敗パターン

「なんとなく和風がいい」という曖昧な方針で進めると、中途半端な内装になりがちです。

例えば

  • 伝統的すぎて若い層に敬遠される
  • モダン要素が強すぎて和の良さが薄れる
  • 料理や商品と内装のテイストが合わない

成功するコンセプト設定

以下の要素を明確にしましょう。

  • ターゲット層の設定
    • 年齢層:30代〜50代の大人世代 / 20代〜30代の若い層
    • 利用シーン:接待・記念日 / カジュアルな飲み会 / 一人利用
    • 客単価:高単価(1万円以上) / 中単価(5千円前後) / 低単価(3千円以下)
  • 和風のテイスト
    • 伝統的な純和風
    • 和モダン
    • モダンジャパニーズ(和の要素を部分的に取り入れる)
  • 重視する要素
    • 高級感・特別感
    • 落ち着き・癒し
    • おしゃれさ・SNS映え

これらを明確にすることで、デザイン会社との打ち合わせもスムーズになり、理想の内装に近づけます。

メンテナンス性と耐久性も考慮した素材選び

天日の事例

和風内装で使用する天然素材は美しい反面、メンテナンスに手間がかかる場合があります。

天然木材のメンテナンス

  • 定期的なオイル仕上げが必要(年1〜2回)
  • 水拭きは変色の原因になるため注意
  • 傷がつきやすい樹種もある

対策

  • カウンターなど使用頻度の高い部分は、ウレタン塗装で保護
  • 床材は硬質な樹種(ケヤキ・オーク)を選ぶ
  • メンテナンス契約を施工会社と結ぶ

左官仕上げのメンテナンス

  • ひび割れが発生する可能性がある
  • 汚れが染み込みやすい
  • 部分補修が難しい

対策

  • 汚れやすいエリアは避ける
  • 撥水加工を施す
  • 定期的な点検を行う

畳のメンテナンス

  • 飲食店では汚れやすい
  • ダニやカビの発生リスク
  • 3〜5年で交換が必要

対策

  • 客席の主要部分には使用を避け、個室など限定的に使用
  • 防汚・防ダニ加工を施した畳を選ぶ
  • こまめな掃除と換気

開業後の運営を見据え、美しさだけでなくメンテナンス性も考慮した素材選びが重要です。

和風デザインに精通した施工会社を選ぶ

鮨 白銀の事例

和風内装は、一般的な内装工事とは異なる専門的な知識と技術が必要です。

施工会社選びのチェックポイント

  • 和風店舗の施工実績
    • 過去に手がけた和風店舗の事例を確認
    • できれば実際の店舗を見学
    • 寿司店・和食店など、自店舗と同業態の実績があるか
  • 職人ネットワークの有無
    • 左官職人・建具職人との連携があるか
    • 木材加工の技術力
    • 伝統的な技法への理解
  • 設計から施工までワンストップ対応
    • 設計と施工が別会社だと、イメージの齟齬が生じやすい
    • ワンストップ対応の会社なら、意思疎通がスムーズ
    • コストも抑えられる傾向
  • アフターフォロー体制
    • 開業後のメンテナンス対応
    • 不具合発生時の対応スピード
    • 保証期間と保証範囲

見積もりの確認ポイント

  • 「坪単価◯◯万円」という大雑把な見積もりではなく、工事項目ごとの詳細見積もりか
  • 木材の樹種や左官材料の種類が明記されているか
  • 諸経費の内訳が明確か
  • 追加費用が発生する可能性のある項目が説明されているか

相見積もりを取る場合も、最安値だけで判断せず、提案内容・実績・対応の丁寧さを総合的に評価しましょう。

まとめ

鮨 無垢の事例

和風な店舗の内装は、一般的な内装と比較して1.3〜1.5倍程度の費用がかかりますが、ブランディング効果や顧客満足度の向上を考えれば、十分に投資価値のある選択肢です。

重要なポイントを改めて整理すると

費用面

  • スケルトン物件:坪単価70万円〜85万円(飲食店の場合)
  • 居抜き物件:前テナントの状態次第で大きく変動
  • コスト削減は「メリハリ」「和モダン」「居抜き活用」「シンプル化」の4つのコツで

向いている業態

  • 和食店・寿司店・日本酒バーなど、日本文化と親和性が高い業態
  • 高級路線・落ち着いた雰囲気を重視する店舗
  • 美容室・サロンでも和モダンは効果的

設計のポイント

  • 木材選定:樹種による印象の違いを理解する
  • 配色:主役(料理・商品)を引き立てる脇役に徹する
  • 照明:間接照明と色温度の工夫で和の雰囲気を演出
  • 建具:格子・障子で視線をコントロール
  • ディテール:左官仕上げや畳で個性を表現

失敗しないために

  • コンセプトとターゲット層を明確に
  • メンテナンス性も考慮した素材選び
  • 和風デザインに精通した施工会社を選ぶ

株式会社RAWMANでは、寿司店をはじめとする多数の和風店舗の内装デザイン実績があります。コンセプト作りから設計・施工まで一貫してサポートいたしますので、和風内装をお考えの方は、ぜひお気軽にご相談ください。

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