【金額よりも確認すべき】内装業者の選び方や適切な問い合わせタイミングを解説!
飲食店や美容室の開業準備で、内装業者選びに悩んでいませんか。「いつ問い合わせればいいの?」「相見積もりは何社に依頼すべき?」「金額だけで決めていいの?」——初めての開業では、こうした疑問が次々と浮かんできます。
内装業者選びは、店舗の成否を左右する重要な決断です。適切な業者を選べば理想の空間が実現しますが、選定を誤ると予算オーバーやイメージと異なる仕上がり、最悪の場合は工事の遅延やトラブルに見舞われることも。
本記事では、美容室275店舗・飲食店263店舗の内装デザインを手がけてきた株式会社RAWMANが、内装業者の正しい選び方を徹底解説します。問い合わせの最適なタイミング、相見積もりを取る際の注意点、金額以外に確認すべき7つのポイントまで、実践的なノウハウをお届けします。
内装業者選びが店舗の成否を左右する3つの理由

内装工事は開業準備の中でも最も大きな投資の一つです。業者選びを誤ると、単に費用が高くつくだけでなく、店舗の完成度や開業後の集客にまで影響が及びます。
理由①業者によって対応範囲と専門性が大きく異なる

内装業者と一口に言っても、対応できる範囲は会社によって大きく異なります。
設計事務所はデザインと設計のみを担当し、施工は別の工務店に依頼する必要があります。工務店は主に一般住宅の建築やリフォームを得意としており、店舗内装の経験が少ない場合も。内装業者の中には、設計から施工まで一貫して対応できる会社もあれば、施工のみを請け負う会社もあります。
さらに、業種による専門性も重要です。飲食店なら厨房設備や給排水工事、保健所の許可基準に関する知識が必要です。美容室ならシャンプー台の配置や電気容量、美容師の動線設計が求められます。オフィス内装が得意な業者に飲食店を依頼しても、専門的なノウハウがないため理想の店舗は実現できません。
理由②金額差だけでなく品質・工期・アフターフォローに差が出る

見積金額が安いからといって、必ずしもお得とは限りません。
内装工事の品質は、使用する素材のグレード、職人の技術力、現場管理の丁寧さによって大きく変わります。安い見積もりを出す業者の中には、見えない部分の材料を安価なものに変更したり、工程を省略したりするケースもあります。
工期の管理能力も業者によって差があります。経験豊富な業者は余裕を持った工程を組み、トラブルが起きても柔軟に対応できます。一方、経験不足の業者は予定通りに進まず、開業日に間に合わないリスクも。物件契約後は家賃が発生しているため、工期の遅延は直接的な損失につながります。
施工後のアフターフォローも見落とせません。開業後に不具合が見つかった際、迅速に対応してくれる業者かどうかは、長期的な店舗運営において重要です。
理由③悪質な業者とのトラブルが後を絶たない

消費者庁の報告によると、内装工事やリフォームに関するトラブルが全国の消費生活センターに多数寄せられています(※1)。
代表的なトラブル事例として、工事契約書の提示がなく口頭のみで契約を迫られ、高額な費用を請求されたケース。当初の見積もりにない追加工事を一方的に行い、後から追加費用を請求されたケース。工事費用を支払ったのに予定日になっても工事が始まらず、業者と連絡が取れなくなったケースなどがあります。
こうした悪質な業者を避けるためには、業者選びの段階で慎重に見極めることが不可欠です。
※1 消費者庁「悪質なリフォーム事業者にご注意ください!!」https://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_policy/caution/caution_031/assets/caution_031_221024_0001.pdf

内装業者への問い合わせタイミングはいつがベストか
内装業者への問い合わせタイミングは、開業準備の進捗に大きく影響します。早すぎても遅すぎても、時間とコストのロスにつながります。

【物件契約前】概算見積もりを取る最適なタイミング

物件契約前に内装業者へ問い合わせるのがベストです。理由は、物件の賃料が払えるかどうかを判断するために、内装費用の概算を把握しておく必要があるためです。
気になる物件が見つかったら、まず内装業者に連絡して概算見積もりを依頼しましょう。このタイミングでは、物件の図面や写真、希望する店舗のイメージを伝えます。スケルトン物件か居抜き物件かによって費用は大きく変わるため、物件の状態を正確に伝えることが大切です。
概算見積もりを取ることで、この物件で開業した場合のトータルコストが見えてきます。内装費用が予算を大幅に超える場合は、物件自体を見直す判断もできます。物件契約後に「内装費用が高すぎて予算オーバー」と気づいても、すでに家賃が発生しているため引き返せません。
【物件契約後】詳細な打ち合わせを開始する流れ

物件契約が完了したら、すぐに内装業者との詳細な打ち合わせを開始します。
まず現地調査を実施し、実際の物件を業者に見てもらいます。図面だけでは分からない構造や設備の状態、天井高、配管位置などを確認します。この段階で、希望するレイアウトや設備配置の実現可能性を検証します。
次にコンセプトヒアリングと詳細プランの作成に入ります。どんな雰囲気の店舗にしたいか、ターゲット顧客は誰か、提供するメニューやサービス内容は何かなど、細かくすり合わせます。業者はこれらの情報をもとに、具体的なデザイン案と詳細見積もりを作成します。
プランと見積もりに納得したら、正式に契約を結び工事に着手します。物件契約から開業までは、スケルトン物件で2〜3ヶ月、居抜き物件で1〜2ヶ月程度が一般的です。
物件探しと並行して業者を探すメリット

物件探しと内装業者探しを並行して進めることで、いくつかのメリットがあります。
まず、物件が決まった瞬間にすぐ動き出せるため、開業までの時間を短縮できます。物件契約後に業者を探し始めると、業者選定だけで数週間かかり、その間も家賃が発生し続けます。
また、複数の物件候補について概算見積もりを依頼できます。「A物件は賃料が安いが内装費用が高い」「B物件は賃料が高いが居抜きで内装費用を抑えられる」といった比較ができ、トータルコストで判断できます。
さらに、内装業者の視点から物件を評価してもらえます。構造上の問題や設備の不備、希望する店舗イメージが実現できるかなど、プロの目線でアドバイスをもらえるのは大きな価値があります。
問い合わせが早すぎる・遅すぎる場合のリスク

問い合わせが早すぎる場合のリスクもあります。物件が全く決まっていない段階で業者に相談しても、具体的な見積もりは出せません。場所や物件の状態によって工事内容は大きく変わるため、漠然とした相談では業者も対応しづらいのです。
逆に、問い合わせが遅すぎると深刻な問題が起こります。物件契約後に業者探しを始めると、家賃が発生している中で焦って業者を決めることになります。十分な比較検討ができず、不本意な業者に依頼してしまうリスクが高まります。
また、希望する業者のスケジュールが埋まっている可能性もあります。人気の内装業者は数ヶ月先まで予約が入っていることも珍しくありません。急いで別の業者を探すことになり、結果的に理想の店舗が作れないことも。
適切なタイミングは、物件候補が2〜3件に絞れた段階で内装業者に連絡し、概算見積もりを依頼することです。

相見積もりを取る際に押さえるべき5つの注意点
複数の業者から見積もりを取る「相見積もり」は、適正価格を知り、信頼できる業者を見極めるために有効です。しかし、やり方を間違えるとかえって混乱を招きます。

注意点①相見積もりは2〜3社が適正。それ以上は避けるべき理由

相見積もりは2〜3社に絞るのが適切です。それ以上の業者に依頼すると、かえってデメリットが大きくなります。
まず、各業者との打ち合わせに膨大な時間がかかります。1社あたり初回相談だけで2〜3時間、現地調査やヒアリングを含めると5社に依頼した場合、10時間以上を費やすことになります。開業準備で忙しい中、この時間は大きな負担です。
また、見積もりの比較が複雑になります。5社の見積書を並べても、項目の立て方や粒度が異なるため、どこがどう違うのか判断できません。結局、金額だけで決めてしまい、本来確認すべき品質や提案内容を見落とすことになります。
さらに、多くの業者に声をかけると、各業者の対応が雑になる傾向があります。「どうせ他にも声をかけているのだろう」と思われ、真剣に提案してもらえない可能性も。
逆に1社だけでは比較ができず、その見積もりが適正かどうか判断できません。2〜3社に絞ることで、適正価格を把握しながら、各社の提案内容もじっくり比較できます。
注意点②見積もり項目の粒度を揃えて正確に比較する

見積書の項目は業者によって書き方が異なります。ある業者は「内装工事一式」とまとめて記載し、別の業者は「軽鉄工事」「ボード工事」「クロス工事」と細かく分けて記載するといった具合です。
項目の粒度が揃っていないと、正確な比較ができません。一式表記の見積書は一見シンプルですが、何が含まれているのか不明確です。後から「これは見積もりに含まれていない」と言われ、追加費用が発生するリスクがあります。
相見積もりを依頼する際は、各業者に同じ条件で見積もりを出してもらうよう依頼しましょう。希望する設備や仕様を明確に伝え、「この条件で見積もりをお願いします」と統一した情報を渡します。
見積書を受け取ったら、項目ごとに横並びで比較します。A社では「電気工事」に含まれているものが、B社では「照明工事」として別項目になっていないか。抜けている項目はないか。細かくチェックすることで、本当の金額差が見えてきます。
注意点③「別途」「諸経費」の内訳を必ず確認する

見積書の中に「別途」「諸経費」といった曖昧な項目があったら要注意です。
「別途」と書かれている項目は、見積もりに含まれていない工事を指します。例えば「厨房機器は別途」と書かれていたら、厨房機器の購入・設置費用は見積もりに入っていません。これを見落として契約すると、後から数百万円の追加費用が発生することも。
「諸経費」も内訳を確認すべき項目です。現場管理費、廃材処分費、駐車場代など、何が含まれているのか説明を求めましょう。諸経費の金額が工事費の10%を超える場合は、内訳を詳しく聞いた方が良いでしょう。
実際にあったトラブル事例として、見積書に「棚は別途」と小さく書かれており、依頼者は見落としていました。打ち合わせでは「棚が欲しい」と伝えていたため、見積もりに含まれていると思い込んでいたのです。正式見積もりで300万円の増額となり、予算オーバーに陥りました。
見積書を受け取ったら、「別途」と記載されている項目を全てリストアップし、それぞれの費用も含めたトータルコストを確認しましょう。
注意点④安すぎる見積もりには理由がある。手抜きや追加請求のリスク

他社より大幅に安い見積もりを出す業者がいたら、むしろ警戒すべきです。
内装工事には、材料費と人件費がかかります。極端に安い見積もりを出すには、どこかでコストを削る必要があります。使用する材料のグレードを下げる、本来必要な工程を省略する、経験の浅い職人を使うなど、品質を犠牲にしている可能性が高いのです。
特に危険なのは、目に見えない部分の手抜きです。配管工事や電気工事、防水処理など、完成後には見えない部分でコストを削られると、開業後にトラブルが発生します。水漏れや漏電、空調の不具合などが起きても、修理には多額の費用がかかります。
また、安い見積もりで契約を取り、後から追加工事を次々と提案して費用を上乗せする悪質な手口もあります。「壁を開けたら配管が古くて交換が必要」「電気容量が足りないから増設が必要」といった理由で、次々と追加費用を請求されます。
適正価格を大きく下回る見積もりには、必ず理由があります。なぜ安くできるのか、どこでコストを抑えているのか、納得できる説明がない限り、その業者は避けるべきです。
注意点⑤他社のデザインを流用する業者は絶対に避ける

極めて悪質なケースとして、他社のデザイン案を流用する業者がいます。
「A社のデザインのままで、30%安く工事します」と言ってくる業者は、明らかに違法です。デザイン案には著作権があり、勝手に流用することは法律違反です。モラル的にも許されません。
また、他社のデザインのまま価格だけ下げるということは、目に見える部分は同じでも、電気・ガス・水道・空調・排気といった設備工事で手抜きをするということです。表面的には同じに見えても、中身は全く別物になります。
こうした業者は工事も適当で、後々トラブルになる可能性が極めて高いです。他社のデザインを流用しようとする業者は、どんなに金額が安くても絶対に契約してはいけません。

金額よりも確認すべき内装業者の選定基準7つ
見積金額は重要な判断材料ですが、それだけで決めるのは危険です。金額以外にも確認すべきポイントがあります。

選定基準①業種別の施工実績が豊富か(飲食店・美容室の専門性)

内装業者を選ぶ際、最も重要なのは業種別の専門性です。
飲食店なら、厨房設備の配置、給排水・ガス工事、換気設備、保健所の許可基準に関する知識が必要です。客席の動線設計や、調理場とホールのバランス、食材の搬入経路なども考慮しなければなりません。
美容室なら、シャンプー台の給排水工事、大型ドライヤーに対応した電気容量、美容師の動線設計、薬剤保管スペースの確保が求められます。鏡の配置やセット面のレイアウトも、美容室特有のノウハウです。
業者のホームページで施工実績を確認し、自分が開業する業種の事例が豊富にあるかチェックしましょう。飲食店を開業するなら飲食店の実績が多い業者を、美容室を開業するなら美容室の実績が多い業者を選ぶことで、専門的なノウハウを活かした店舗づくりが実現できます。
施工実績が少ない業者に依頼すると、手探りで工事を進めることになり、失敗のリスクが高まります。開業後に使い勝手の悪さに気づいても、改修には多額の費用がかかります。
選定基準②設計から施工までワンストップ対応できるか

設計と施工を一貫して対応できる業者を選ぶことをおすすめします。
設計会社と施工会社が別々だと、コミュニケーションロスが生じます。設計者の意図が施工現場に正確に伝わらず、イメージと異なる仕上がりになるリスクがあります。また、問題が起きた際の責任の所在が曖昧になり、対応が遅れることも。
ワンストップ対応のメリットは、設計意図が施工にダイレクトに反映されることです。デザイナーと職人が同じ会社にいるため、細かなニュアンスまで共有できます。変更や追加の要望にも柔軟に対応でき、スムーズにプロジェクトが進みます。
また、窓口が一本化されるため、やり取りの手間が減ります。設計と施工で別々の会社に連絡する必要がなく、すべて一箇所に相談できます。
コスト面でも、中間マージンが発生しないため、トータルで見ると割安になる傾向があります。
選定基準③デザインのテイストやセンスが合致するか

業者によって、得意とするデザインテイストは異なります。
施工事例を見て、自分がイメージする店舗の雰囲気と合っているか確認しましょう。モダンな雰囲気が得意な業者、和風が得意な業者、インダストリアルなデザインが得意な業者など、それぞれ特色があります。
どれだけ技術力が高くても、センスが合わない業者に依頼すると、満足のいく仕上がりにはなりません。「この雰囲気、好きだな」と感じる施工事例が多い業者を選ぶことで、理想のイメージに近い提案をしてもらえます。
また、施工事例のページには、デザインのこだわりポイントや工夫した点が説明されていることがあります。こうした説明を読むことで、業者のデザインに対する考え方や価値観が見えてきます。
自分の価値観と合う業者を選ぶことが、満足度の高い店舗づくりにつながります。
選定基準④見積もりの透明性と説明の丁寧さ

見積書の透明性は、業者の信頼性を測る重要な指標です。
工事項目ごとに明細が記載された詳細見積もりを提出してくれる業者を選びましょう。「内装工事一式 ◯◯万円」といった大雑把な見積もりでは、何にいくらかかっているのか分かりません。
詳細見積もりには、材料の種類や数量、単価、工事内容が具体的に記載されています。これにより、どこにお金がかかっているのか、何を変更すればコストを抑えられるのかが明確になります。
また、見積書について質問した際の対応も見極めポイントです。「この項目は何ですか?」「なぜこの金額になるのですか?」といった質問に、丁寧に分かりやすく説明してくれる業者は信頼できます。
質問を嫌がったり、曖昧な回答しかしなかったりする業者は要注意です。透明性のある見積もりと丁寧な説明ができる業者を選びましょう。
選定基準⑤契約内容・工期・保証の明確性

契約前に、契約内容・工期・保証について明確な説明がある業者を選びましょう。
工事契約書には、工事内容、金額、支払い条件、工期、保証内容が明記されているべきです。口頭での約束だけで契約を進めようとする業者は避けてください。後からトラブルになった際、証拠がなければ対応してもらえません。
工期についても、開始日と完成予定日が明確に記載されているか確認します。「だいたい2ヶ月くらい」といった曖昧な表現ではなく、具体的な日付が書かれているべきです。万が一工期が遅れた場合の対応についても、事前に確認しておきましょう。
保証内容も重要です。施工後どれくらいの期間、どの範囲まで保証してくれるのか。不具合が見つかった際の連絡先はどこか。これらを契約前に明確にしておくことで、開業後のトラブルを防げます。
契約内容が不明確な業者や、納期を明示しない業者は、悪徳業者の可能性が高いです。
選定基準⑥担当者の対応力とコミュニケーション力

内装工事は、完成までに数ヶ月かかる長期プロジェクトです。その間、担当者と何度も打ち合わせを重ねることになります。
初回相談時の担当者の対応を注意深く観察しましょう。こちらの話を丁寧に聞いてくれるか。質問に的確に答えてくれるか。レスポンスは早いか。これらは、今後のやり取りがスムーズに進むかどうかを示す重要な指標です。
また、提案力も見極めポイントです。こちらの要望をただ聞くだけでなく、「こうしたらもっと良くなる」「この部分は予算を抑えられる」といった具体的な提案をしてくれる担当者は頼りになります。
逆に、高圧的な態度だったり、質問に答えてくれなかったり、連絡が遅かったりする担当者とは、今後のやり取りでストレスを感じることになります。
担当者との相性は、プロジェクトの成功に大きく影響します。「この人となら一緒に店舗を作っていけそう」と感じられる担当者を選びましょう。
選定基準⑦施工後のアフターフォロー体制

開業後に不具合が見つかることもあります。その際、迅速に対応してくれるアフターフォロー体制が整っているかは重要です。
保証期間はどれくらいか、どこまでが保証範囲なのか、不具合発生時の連絡先はどこか、対応までにどれくらい時間がかかるのか。これらを契約前に確認しておきましょう。
アフターフォローが充実している業者は、施工後の定期点検を実施していたり、不具合が起きた際の24時間対応窓口を設けていたりします。こうしたサービスがある業者を選ぶことで、開業後も安心して営業できます。
また、数年後の改装やメンテナンスの相談にも乗ってくれる業者だと、長期的なパートナーとして付き合えます。「工事が終わったら終わり」ではなく、開業後も継続的にサポートしてくれる関係性を築ける業者を選びましょう。

よくある内装業者選びの失敗例と対策
実際に起きた失敗例から学ぶことで、同じ過ちを避けられます。

失敗例①不動産会社の紹介業者に依頼して割高になった

物件契約時に、不動産会社から「内装業者を紹介しましょうか?」と言われることがあります。一見便利に思えますが、注意が必要です。
不動産会社が紹介する業者は、紹介手数料として工事金額の10〜20%を不動産会社に支払っている場合があります。この手数料は工事金額に上乗せされるため、直接依頼するよりも割高になります。
また、不動産会社が紹介する業者が必ずしも優良とは限りません。店舗内装の経験が少ない業者や、デザイン性の低い業者を紹介されることもあります。
さらに、紹介された業者で契約しないと物件を貸さないと言われたり、断りづらい雰囲気になったりするケースも報告されています。
対策として、不動産会社から「内装業者を紹介しましょうか?」と言われても、「自分で手配しますので大丈夫です」と最初から断っておくことです。すでに探している業者がある、知人の紹介で決まっているなど、理由を添えるとスムーズです。
失敗例②ポータルサイト経由で手数料が上乗せされた

内装業者のポータルサイトや紹介サイトを利用して業者を探す方もいるでしょう。しかし、こうしたサイトには注意が必要です。
ポータルサイトは広告出稿費ビジネスで成り立っており、掲載業者はサイトに手数料を支払っています。「一件紹介したら◯万円」という成果報酬型や、「多く手数料を払う業者を優先的に紹介」という仕組みもあります。
つまり、利用者にとって最適な業者を紹介しているのではなく、サイト運営者にとって儲かる業者を紹介している可能性があるのです。
また、ポータルサイトへの広告出稿費は、最終的に工事費用に上乗せされます。直接業者に依頼するよりも割高になる傾向があります。
対策として、ポータルサイトで業者を探すのではなく、自分でインターネット検索をして業者のホームページを直接見ることです。施工事例やサービス内容を確認し、気に入った業者に直接問い合わせましょう。
失敗例③概算見積もりから大幅に増額されて予算オーバー

物件契約前に概算見積もりを取り、予算内に収まる金額だったため物件を契約しました。ところが、詳細な打ち合わせ後に正式見積もりを受け取ると、なんと300万円も増額されていました。
原因は見積もり項目の齟齬です。依頼者は「棚が欲しい」「ワインセラーを置きたい」と伝えていたため、見積もりに含まれていると思っていました。しかし、実際は見積もりに含まれておらず、見積書には小さく「別途」と記載されていました。
業者は「概算はあくまで概算です」「詳細が決まっていなかったから、当初の見積もりには入っていませんでした」「見積書にちゃんと『別途』って書いてあるでしょ?」と説明。物件は契約済みで家賃も発生しており、他に当てもなかったため、やむなく増額した金額で契約しました。
対策として、概算見積もりの段階でも、できるだけ具体的に希望を伝えることです。必要な設備や備品をリストアップし、「これらすべてを含めた金額でお願いします」と明確に依頼しましょう。
また、見積書の「別途」項目を見落とさないよう、隅々まで確認することも大切です。
失敗例④知人紹介で断りづらく妥協してしまった

知人に店舗経営者がいる場合、内装業者を紹介してもらえることがあります。知人の紹介なので悪徳業者の可能性は低く、安心感があります。
しかし、デメリットもあります。知人の紹介だと、イメージに合わないと思っても断りにくいのです。「せっかく紹介してもらったのに断るのは申し訳ない」と感じ、妥協して契約してしまうケースがあります。
また、相見積もりを取りづらくなります。紹介してもらった業者と他社を比較すること自体が、知人に対して失礼に感じられるためです。結果として、その業者の見積もりが適正かどうか判断できないまま契約することになります。
対策として、知人から紹介を受けた場合でも、「他の業者とも比較検討したい」と正直に伝えることです。「大きな買い物なので慎重に決めたい」と説明すれば、理解してもらえるはずです。
最終的に紹介された業者を選ばなかった場合は、丁寧にお礼を伝え、選ばなかった理由を説明しましょう。誠実な対応をすれば、人間関係が壊れることはありません。

信頼できる内装業者を見分けるチェックリスト

内装業者を選ぶ際、具体的に何を確認すればよいのか、チェックリストにまとめました。
初回相談時に確認すべき10の質問

初回相談では、以下の質問を投げかけてみましょう。業者の対応から、信頼性や専門性が見えてきます。
- 当社と同じ業種(飲食店・美容室など)の施工実績は何件ありますか?
- 設計から施工まで一貫して対応できますか?
- 概算見積もりはどれくらいの期間で出せますか?
- 見積もりに含まれないもの(別途費用)は何がありますか?
- 工期はどれくらいかかりますか?
- 工期が遅れた場合、どのような対応をしてもらえますか?
- 施工後の保証期間と保証範囲を教えてください。
- 不具合が起きた際の連絡先と対応時間を教えてください。
- 過去に同じエリアでの施工実績はありますか?
- 支払い条件(着手金・中間金・完成時)を教えてください。
これらの質問に対して、明確かつ丁寧に答えてくれる業者は信頼できます。逆に、曖昧な回答しかしなかったり、質問を嫌がったりする業者は避けるべきです。

見積書で必ずチェックすべき項目
見積書を受け取ったら、以下の項目を必ず確認しましょう。

まず、工事項目が具体的に記載されているか。「内装工事一式」といった大雑把な表記ではなく、「軽鉄工事」「ボード工事」「クロス工事」など、項目ごとに分かれているかチェックします。
次に、材料の種類や数量、単価が記載されているか。例えば「床材:フローリング ◯◯円/㎡ ×△△㎡」といった具体的な記載があれば、何にいくらかかっているか明確です。
「別途」と記載されている項目がないか、あった場合は何が別途なのかリストアップします。厨房機器、家具、什器、看板、電話工事など、見積もりに含まれていないものを把握しましょう。
諸経費の内訳が明確か。現場管理費、廃材処分費、交通費など、何が含まれているのか確認します。諸経費が工事費の10%を超える場合は、詳細な説明を求めましょう。
支払い条件が明記されているか。着手金、中間金、完成時の支払い額と支払いタイミングが明確に書かれているべきです。
これらを確認することで、見積もりの透明性と業者の信頼性が判断できます。
契約前に確認すべき保証内容とアフターフォロー
契約前に、以下の保証内容とアフターフォローについて確認しましょう。

保証期間はどれくらいか。一般的に、内装工事の保証期間は1〜2年程度です。保証期間内に不具合が見つかった場合、無償で修理してもらえます。
保証範囲はどこまでか。構造的な欠陥や施工不良は保証対象ですが、通常の使用による経年劣化や、お客様の過失による破損は保証対象外です。どこまでが保証されるのか、具体的に確認しましょう。
不具合発生時の連絡先と対応時間はどうなっているか。営業時間内のみの対応か、緊急時は24時間対応してくれるのか。連絡先は固定電話か携帯電話か。迅速に対応してもらえる体制が整っているか確認します。
定期点検はあるか。施工後、定期的に店舗を訪問して点検してくれる業者もあります。こうしたサービスがあると、小さな不具合も早期に発見でき、大きなトラブルを防げます。
将来の改装やメンテナンスの相談も受け付けてくれるか。数年後に改装が必要になった際、相談できる関係性があると心強いです。
これらを契約前に確認し、契約書に明記してもらうことで、開業後のトラブルを防げます。

RAWMANが手がけた内装事例から学ぶ業者選びのポイント
株式会社RAWMANが手がけた実例から、内装業者選びのポイントを見ていきましょう。
【美容室事例】BLONDE:モダンで洗練された空間デザインの実現

BLONDEは東京都内に位置する約60.02㎡(約18坪)の美容室です。RAWMANが設計から施工まで一貫して対応しました。
シンプルながら印象的な空間構成が特徴で、洗練されたカラーパレットで統一感を演出しています。機能性とデザイン性を両立したレイアウトにより、スタッフの作業効率とお客様の快適性を実現。都会的な雰囲気の中にも温かみを感じる照明計画で、冷たすぎない洗練された空間に仕上がっています。
限られた面積の中で、圧迫感を感じさせない開放的な空間を実現したのは、美容室特有の動線設計や設備配置に関する専門的なノウハウがあったからこそです。
【飲食店事例】鮨 四心:コンセプトから施工まで一貫対応した事例

鮨 四心は東京都港区に位置する16.8坪の寿司店です。「今までにないモダンな鮨店」をテーマに、RAWMANがデザインから施工まで一貫して対応しました。
壁面には白を基調としたタイルを使用し、真鍮色をアクセントとして用いることにより、和のnewスタイルを創造。華やかな和食を提供する店舗イメージを演出しています。
伝統的な寿司店の枠を超えた現代的な空間デザインは、設計から施工までワンストップで対応したことで、細部まで妥協のない仕上がりとなりました。飲食店特有の厨房設備や給排水工事についても、豊富な実績に基づいた専門的なノウハウを活かしています。
【小規模飲食店事例】NORURADA:素材を追求したデザイン性の高い空間

NORURADAは東京都港区に位置する8.4坪の韓国料理・肉割烹店です。RAWMANが設計から施工まで一貫して対応しました。
黒の質感・陰影・ムラ・光沢感など、素材をとにかく追求した空間に仕上げています。黒の素材に囲まれた中で、アクセントに韓国格子の障子を取り入れ、間接照明で照らすことにより空間の温かみを演出しました。
小規模な飲食店でも、素材へのこだわりと空間デザインの工夫により、唯一無二の雰囲気を実現。この事例は、内装業者選びにおいて「イメージを実現できるか」「施工まで一貫して対応できるか」が重要であることを示しています。

内装業者選びで後悔しないための行動ステップ
ここまでの内容を踏まえ、具体的にどのように行動すればよいか、ステップごとに解説します。

ステップ①物件探しと並行して複数の業者をリストアップする

物件探しを始めたら、同時に内装業者のリサーチも始めましょう。
インターネットで「地域名 店舗内装」「業種名 内装デザイン」などのキーワードで検索します。気になる業者のホームページを開き、施工実績やサービス内容を確認します。
自分が開業する業種(飲食店・美容室など)の実績が豊富か。デザインのテイストが好みに合うか。設計から施工までワンストップ対応しているか。これらの基準で5〜10社程度をリストアップします。
InstagramなどのSNSも活用しましょう。「#店舗デザイン」「#飲食店内装」などのハッシュタグで検索すると、施工事例が見つかります。気に入った写真から業者を見つけ、リストに加えます。
知人に店舗経営者がいる場合は、どの業者に依頼したか聞いてみるのも良いでしょう。実際に使った人の感想は貴重な情報です。
ステップ②施工実績とデザインテイストを確認する

リストアップした業者の施工実績を詳しく確認します。
ホームページの施工事例ページを見て、写真だけでなく説明文も読みましょう。どんなコンセプトで設計したのか、どこにこだわったのか、どんな工夫をしたのか。これらの説明から、業者のデザインに対する考え方が見えてきます。
自分が開業する業種の事例が多いか、少なくとも10件以上はあるか確認します。事例が少ない場合は、その業種の経験が浅い可能性があります。
デザインのテイストが自分の好みに合っているかもチェックします。「この雰囲気、良いな」と感じる事例が複数あれば、自分のイメージも実現してもらえる可能性が高いです。
口コミやレビューがあれば確認しましょう。Googleマップで業者名を検索すると、利用者のレビューが見られることがあります。担当者の対応や工事の品質、アフターフォローについての生の声は参考になります。
この段階で、2〜3社に絞り込みます。
ステップ③2〜3社に絞って初回相談・概算見積もりを依頼する

2〜3社に絞ったら、初回相談の問い合わせをします。
問い合わせフォームまたは電話で連絡し、「飲食店(または美容室)の開業を検討しており、内装デザインの相談をしたい」と伝えます。物件候補がある場合は、その情報も伝えましょう。
初回相談では、開業したい業種、コンセプト、ターゲット顧客、予算などを伝えます。物件の図面や写真があれば、それも共有します。
業者からは、過去の施工事例の紹介や、大まかなプランの提案があります。この段階で、担当者の対応を注意深く観察しましょう。話をしっかり聞いてくれるか、質問に的確に答えてくれるか、提案力はあるか。
概算見積もりを依頼します。「同じ条件で見積もりをお願いします」と伝え、希望する設備や仕様を明確に伝えます。見積もりに含まれるもの・含まれないものを確認しましょう。
概算見積もりは通常、1〜2週間で出てきます。
ステップ④詳細な見積もりを比較して総合的に判断する

概算見積もりを受け取ったら、2〜3社の見積もりを比較します。
金額だけでなく、見積もりの透明性、提案内容、担当者の対応を総合的に評価しましょう。
見積書の項目を横並びで比較します。ある業者では含まれているものが、別の業者では「別途」になっていないか。抜けている項目はないか。細かくチェックします。
「別途」項目も含めたトータルコストを計算し、本当の金額差を把握します。一見安く見えても、別途費用を加えると高くなることもあります。
各業者に質問し、不明点をクリアにします。「この項目は何ですか?」「なぜこの金額になるのですか?」「保証期間はどれくらいですか?」。丁寧に答えてくれる業者を選びましょう。
金額、提案内容、担当者の対応、施工実績、デザインのセンス、アフターフォロー体制など、すべての要素を総合的に評価し、最も信頼できる業者を選びます。
ステップ⑤契約前に保証内容とアフターフォローを確認する

業者を決めたら、契約前に最終確認を行います。
工事契約書の内容を隅々まで確認しましょう。工事内容、金額、支払い条件、工期、保証内容が明記されているか。不明な点があれば、すべて質問します。
保証内容を再確認します。保証期間、保証範囲、不具合発生時の連絡先、対応時間。これらが契約書に明記されているか確認しましょう。
支払い条件も重要です。一般的に、着手金(30〜40%)、中間金(30%)、完成時(30〜40%)という分割払いになります。全額前払いを要求する業者は避けてください。
工期についても確認します。開業予定日から逆算して、余裕を持ったスケジュールになっているか。万が一遅れた場合の対応はどうなるか。
すべてに納得したら、契約を結びます。契約書は必ず控えをもらい、大切に保管しましょう。

まとめ:金額だけでなくイメージを実現できる業者を選ぼう
内装業者選びは、店舗の成否を左右する重要な決断です。金額だけで判断せず、業種別の専門性、設計から施工までのワンストップ対応、デザインのセンス、担当者の対応力、アフターフォロー体制など、総合的に評価しましょう。
問い合わせのタイミングは、物件候補が絞れた段階で概算見積もりを取るのがベストです。相見積もりは2〜3社に絞り、見積もり項目の粒度を揃えて正確に比較します。「別途」「諸経費」の内訳を必ず確認し、安すぎる見積もりには警戒しましょう。
どれだけ予算が高かろうが低かろうが、イメージと違ったら意味がありません。自分が思い描く店舗のイメージを忠実に再現し、施工まで一貫して対応できる業者を選ぶことが、理想の店舗づくりにつながります。
株式会社RAWMANは、美容室275店舗・飲食店263店舗の内装デザイン実績があります。コンセプト作りから設計・施工まで一貫してサポートいたしますので、内装業者選びでお悩みの方は、ぜひお気軽にご相談ください。

