【売上が決まる!】寿司屋のカウンター寸法や高さ・動線など居心地のよい店舗づくりの秘訣
寿司屋のカウンター寸法は、お客様の満足度と職人の作業効率を左右する重要な要素です。カウンターの高さや奥行、座席幅が数センチ違うだけで、居心地の良さは大きく変わります。
実は、カウンターの高さは85〜90cmが一般的ですが、これは職人とお客様の目線バランスを最適化した寸法なのです。奥行は450mm程度が理想とされ、付け台との関係性も重要になります。さらに、一席あたりの幅を600mm確保すると、ゆったりとした食事を楽しめます。
本記事では、多数の寿司店デザインを手がけてきた株式会社RAWMANが、カウンターの最適な寸法や動線設計のポイントを、実例とともに詳しく解説します。これから開業を検討されている方や、改装を考えている方はぜひ参考にしてください。
寿司屋のカウンター寸法が重要な3つの理由

お客様の居心地を左右する体感バランス

カウンターに座ったとき、無意識のうちに感じる「ちょうどいい高さ」や「程よい広さ」。この体感バランスが、お客様の滞在時間やリピート率を左右します。
カウンターが低すぎると職人を見上げる形になり、圧迫感を感じてしまいます。反対に高すぎると、料理を取る動作が不自然になり落ち着いて食事ができません。日本人の平均身長を考慮すると、男性で約170cm、女性で約155cmとされています(※1)。この体格に合わせた設計が、自然な姿勢での食事を実現します。
また、隣の席との距離も重要です。幅が狭すぎると窮屈で、広すぎると一体感が薄れてしまいます。適切な寸法設計によって、お客様が「また来たい」と思える空間を作ることができます。
※1 厚生労働省「国民健康・栄養調査」https://www.e-stat.go.jp/
職人の作業効率と疲労度を決定づける動線設計

カウンター寸法は、お客様だけでなく職人の働きやすさにも直結します。つけ場の奥行が狭いと、ネタケースや調理機器の配置に無理が生じ、作業効率が落ちてしまいます。
職人が無駄な動きをせずスムーズに作業できる動線を確保することで、提供スピードが上がり、疲労も軽減されます。特に寿司屋の場合、握りから盛り付け、食器の上げ下げまで、すべてカウンター内で完結します。1日に何度も繰り返される動作だからこそ、数センチの違いが積み重なって大きな差となって現れます。
職人が快適に働ける環境は、料理の質にも好影響を与えるでしょう。
売上と回転率に直結する座席配置

カウンターの寸法設計は、店舗の収益性にも影響します。座席数を増やしたいからといって、一席あたりの幅を狭くしすぎると、お客様の居心地が悪くなりリピート率が下がってしまいます。
一方で、ゆったりとした空間を重視しすぎると座席数が減り、売上機会を逃すことになります。高級店か大衆店か、カウンターのみか個室併設か、といった業態によって最適なバランスは変わります。
ターゲット顧客層の単価と滞在時間を想定し、適切な座席幅と総席数を設定することが、安定した経営につながります。

【基本寸法】寿司屋カウンターの高さ・奥行・幅の最適値

カウンターの高さ:85〜90cmが標準(ミドルカウンター)

寿司屋で最も多く採用されているのが、高さ85〜90cm程度のミドルカウンターです。この高さは、職人とお客様の目線が自然に近くなり、会話がしやすい距離感を生み出します。
ミドルカウンターに合わせる椅子の高さは65cm前後が一般的です。平均的な身長の方が座ると、足のつま先が床につく程度の高さになります。完全に足が床につかないハイカウンターよりも安定感があり、長時間座っていても疲れにくいのが特徴です。
カウンターの高さは、職人の身長によっても調整が必要です。身長が高い職人の場合は90cm寄りに、低い場合は85cm寄りに設定することで、作業時の姿勢が楽になります。開業時に職人の体格を考慮して決定しましょう。
参考までに、ローカウンター(70cm程度)は家庭のダイニングテーブルと同じ高さで、足がしっかり床につくため長時間の滞在に適しています。ハイカウンター(100〜105cm程度)は立ち飲みスタイルに近く、回転率を重視する業態で採用されます。
カウンターの奥行:450〜500mmで付け台との関係性を考慮

カウンターの奥行は、料理を置くスペースとして450〜500mm程度が標準です。この寸法があれば、お皿やグラスを複数並べても窮屈になりません。
ただし、寿司屋の場合は付け台の存在を忘れてはいけません。付け台とは、握った寿司を一旦置いておく小さなカウンターで、メインのカウンターより15〜20cm程度高い位置に設置されます。この付け台の奥行は200mm程度が一般的です。
カウンター本体と付け台を合わせた総奥行を考えると、お客様から見て650〜700mm程度の空間が生まれます。付け台が高すぎると料理が取りにくくなり、低すぎると職人が見下ろされているように感じてしまいます。両者のバランスを考えた設計が大切です。
奥行を広く取りすぎると、職人とお客様の距離が遠くなり一体感が薄れます。反対に狭すぎると、料理を置くスペースが不足してしまいます。業態や提供スタイルに応じて、最適な寸法を選びましょう。
一席あたりの幅:600mm以上でゆとりある空間を

一席あたりの幅は600mm程度が基本です。この寸法は、日本人の平均的な肩幅(約45cm)に、両側の余裕を加えた数値です。
高級寿司店の場合、一席あたり700〜800mmと広めに設定することもあります。座席間にゆとりを持たせることで、隣の席を気にせずゆっくりと食事を楽しめます。接待や記念日利用など、特別な時間を過ごしたいお客様には好まれるでしょう。
一方、カジュアルな立ち食い寿司や回転寿司では、500〜550mm程度と狭めに設定し、座席数を増やすケースもあります。回転率を重視する業態では、適度なコンパクトさが効率につながります。
10席のカウンターを想定する場合、600mm × 10席 = 6,000mm(6m)のカウンター長が必要です。物件の間口を確認し、希望する座席数が確保できるか事前に計算しておきましょう。
付け台の寸法:カウンターより150〜200mm高く設定

付け台は、カウンターより150〜200mm高い位置に設置するのが一般的です。この高さ差によって、職人が自然な姿勢で握った寿司を置くことができ、お客様も取りやすくなります。
付け台の高さが低すぎると、職人が腰をかがめる動作が増えて負担になります。高すぎると、お客様が料理を取る際に手を伸ばしにくくなってしまいます。150〜200mmという寸法は、長年の経験から導き出された最適値と言えるでしょう。
付け台の奥行は200mm程度が標準です。皿を2〜3枚並べられる程度のスペースがあれば、スムーズな提供が可能です。付け台を広く取りすぎると、お客様との距離が遠くなり寿司屋特有の臨場感が薄れてしまいます。
付け台の素材も重要です。カウンター本体と同じ木材を使用することで統一感が生まれますが、ステンレスなど清掃性の高い素材を選ぶ選択肢もあります。衛生面と見た目のバランスを考えて決定しましょう。

カウンター内の職人側の寸法設計

つけ場の作業スペース:奥行1,200mm以上を確保

つけ場とは、カウンター内側の職人が作業するスペースのことです。この奥行が1,200mm以上あれば、ネタケースや炊飯器、シンクなどを配置しても、職人が窮屈さを感じずに動けます。
1,200mmという寸法は、奥側の壁面に設備を配置し、手前側に職人が立つ作業スペースを確保した場合の最低限の奥行です。理想を言えば1,500mm程度あると、より余裕を持った作業が可能になります。
ネタケースは通常、奥行600〜700mm程度の冷蔵ショーケースを使用します。これを壁際に配置し、手前に600mm程度の作業スペースを確保する計算です。シャリを握る、包丁で切る、盛り付けるといった一連の動作を考えると、このくらいのスペースが必要になります。
つけ場が狭すぎると、職人の動きが制限され作業効率が落ちてしまいます。物件を選ぶ段階で、カウンター奥行とつけ場の奥行の両方を確保できるか確認しておきましょう。
職人の動線幅:600〜800mmで効率的な作業を実現

つけ場内で職人が移動する通路幅は、600〜800mmが目安です。一人で作業する場合は600mmでも十分ですが、複数人で調理する場合は800mm程度あると、すれ違いがスムーズになります。
厨房の通路幅として800mm以上が理想とされていますが、寿司屋のつけ場の場合、作業エリアがコンパクトな方が効率的なケースもあります。少人数で回す店舗では、むしろ650〜700mm程度に抑えることで、手を伸ばせば必要な道具や食材に届く距離感を保てます。
動線幅を考える際は、冷蔵設備の扉の開閉スペースも忘れずに計算に入れましょう。ネタケースやドリンク用冷蔵庫の扉を開けたとき、通路を完全に塞いでしまわないよう配慮が必要です。
職人が無駄な動きをせずに作業できる動線設計は、提供スピードの向上だけでなく、長時間労働による疲労軽減にもつながります。
ネタケースと調理機器の配置バランス

つけ場内の限られたスペースに、ネタケース、炊飯器、シンク、まな板スペース、ゴミ箱など、多くの設備を配置する必要があります。この配置バランスが作業効率を大きく左右します。
最も使用頻度が高いネタケースは、職人の正面に配置するのが基本です。握る動作の直前にネタを取り出すため、この位置が最も効率的です。炊飯器は保温状態で使用することが多いため、少し離れた位置でも問題ありません。
シンクは包丁やまな板を洗う頻度を考えると、作業エリアの端に配置するのが一般的です。ただし、動線が交差しないよう注意が必要です。お客様に背を向けて洗い物をする配置になると、接客がおろそかになってしまいます。
小規模店舗の場合、すべての設備を理想的な配置にするのは難しいこともあります。その場合は、使用頻度の高い設備から優先的に良い位置に配置し、妥協できる部分を見極めることが大切です。

お客様側の動線設計と通路幅の確保

客席通路幅:800〜1,200mmで快適な移動を

カウンター席の背もたれから後ろの壁や通路までの距離は、800mm以上確保するのが基本です。この幅があれば、二人がすれ違っても肩が当たらず、スムーズに移動できます。
800mmという寸法は、椅子に座っているお客様の後ろを、別のお客様や従業員が通る際に必要な最低限の幅です。トイレへの動線や、入退店時の移動を考えると、この程度の余裕は必要になります。
より快適な空間を目指すなら、1,000〜1,200mm程度確保することをおすすめします。特にレジ周りやトイレ付近など、動線が重なりやすい場所では広めに取っておくと、混雑時もストレスなく移動できます。
個室を併設する場合や、カウンター席とテーブル席が混在する場合は、それぞれのエリアへの動線が交差しないよう配慮しましょう。動線が複雑になると、お客様だけでなく従業員も動きにくくなってしまいます。
カウンター席の椅子選びと脚のかけやすさ

カウンター席の椅子選びは、座り心地だけでなく脚のかけやすさも重要なポイントです。ミドルカウンターの場合、座面高65cm程度の椅子を使用しますが、この高さだと足が完全には床につきません。
そこで重要になるのが、フットレスト(足置き)の存在です。椅子の脚に足をかけられるリングがついているタイプを選ぶと、長時間座っていても疲れにくくなります。フットレストの位置は、床から25〜30cm程度の高さが理想的です。
背もたれの有無も検討ポイントです。背もたれがあると、ゆったりとくつろげる一方、席を立つ際に椅子を引く動作が必要になり、通路幅を広めに確保しなければなりません。回転率を重視する業態では、背もたれのないスツールタイプも選択肢に入ります。
椅子の素材は、木製、レザー、ファブリックなどがあります。高級感を出したいなら木製やレザー、カジュアルな雰囲気ならファブリックというように、店舗のコンセプトに合わせて選びましょう。清掃のしやすさも考慮すると、レザーやビニールレザーが実用的です。
荷物置きスペースの設置と収納の工夫

カウンター席の弱点は、荷物置き場に困ることです。特に女性客は、バッグやコートなど荷物が多い傾向にあります。荷物置きスペースを用意しておくと、顧客満足度が高まります。
最も一般的なのは、カウンター下に荷物置き用の棚を設けることです。座面の下、足元より少し奥に小さな棚を作っておくと、バッグを置くことができます。ただし、奥行が深すぎると取り出しにくくなるため、200〜300mm程度が適切です。
椅子の背もたれにフックを取り付けるのも効果的です。コートやバッグを掛けられるようにしておくと、座席周りがすっきりします。ただし、隣の席との間隔が狭い場合は、荷物が隣にはみ出さないよう注意が必要です。
カウンター席だけでなく、エントランス付近にコート掛けや傘立てを設置しておくことも検討しましょう。特に冬場は、かさばる上着を預かることで、座席周りの窮屈さを解消できます。

エントランスからカウンターまでの動線設計

エントランス幅:900〜1,200mmで余裕を持たせる

エントランスは、入店するお客様、退店するお客様、案内する従業員が同時にすれ違う可能性がある場所です。そのため、900〜1,200mm程度の幅を確保しておくと、混雑時もスムーズな動線を保てます。
900mmという寸法は、二人がすれ違える最低限の幅です。高級店や接待需要の多い店舗では、1,200mm以上確保することで、ゆったりとした印象を与えられます。第一印象は重要なので、エントランスには十分なスペースを割きたいところです。
靴を脱ぐタイプの飲食店の場合は、さらに広めのエントランスが必要です。靴の脱ぎ履きをするスペースと、下足入れを配置するスペースを考慮しましょう。下足入れは扉付きのタイプを選ぶと、乱雑な印象を避けられます。
エントランスから店内が丸見えにならないよう、暖簾や格子戸で適度に目隠しをするのも効果的です。「これから特別な空間に入る」という期待感を高め、非日常の演出につながります。
待合スペースの確保と顧客導線の最適化

予約制の高級寿司店でも、前のお客様の退店が遅れることはあります。そんなとき、待合スペースがないと、次のお客様を外で待たせることになってしまいます。
待合スペースを別に設けない場合、エントランスを広めに取り、簡易的な椅子を配置しておくと良いでしょう。立ったまま待たせるよりも、座って待てる環境があると、お客様のストレスは大きく軽減されます。
待合からカウンターまでの動線も重要です。案内された際に、他のお客様の席の前を横切らずに済む動線が理想的です。エントランスからカウンターの端まで、スムーズに誘導できる配置を考えましょう。
トイレへの動線も忘れてはいけません。カウンター席からトイレに向かう際、他のお客様の背後を通らざるを得ない配置は避けたいところです。物件の構造上難しい場合もありますが、できる限り配慮することで、全体の居心地が向上します。

【事例紹介】RAWMANが手がけた寿司店のカウンター設計

鮨 四心(56㎡):洗練されたカウンター空間

鮨 四心は、東京都港区六本木一丁目に位置する約56㎡(約17坪)の寿司店です。「今までにないモダンな鮨店」をコンセプトに、RAWMANがデザインを手がけました。
壁面には白を基調としたタイルを使用し、真鍮色をアクセントとして配することで、伝統的な寿司店とは一線を画す現代的な空間を実現しています。華やかでありながら料理を引き立てる配色は、新しいスタイルの寿司体験を求める顧客層に支持されています。
カウンター設計においても、動線と居心地のバランスを重視しました。限られた面積の中で、職人の作業効率とお客様のゆとりある空間を両立させています。モダンなデザインの中にも、寿司屋としての機能性をしっかりと確保した設計です。
詳細はこちら:https://rawman.co.jp/projects/sushi-yonshin/
鮨 みつよし(66.4㎡):2つの異なるカウンターデザイン

鮨 みつよしは、東京都港区新宿御苑前に位置する約66.4㎡(約20坪)の寿司店です。この店舗の特徴は、2つの異なる空間を持つ構成にあります。
メイン客席では、けやきの一枚カウンターを主役に据えています。ベージュを基調とした左官とタイルで仕上げ、網代天井と木格子障子が落ち着きのある和の雰囲気を醸し出します。素材の質感を活かした設計により、高級感と居心地の良さを実現しました。
VIP客席は、メイン客席とは別の入口を設けてプライベート性を確保しています。いちょうのL型カウンターを採用し、座席の間隔を広めに取ることで、ゆったりとした時間を過ごせます。黒を基調とした墨モルタル左官と、間接照明で演出した木格子が、品のある特別な空間を作り上げています。
カウンターの寸法や素材選びにおいても、それぞれの空間のコンセプトに合わせて最適化しています。
詳細はこちら:https://rawman.co.jp/projects/sushi-mitsuyoshi/
鮨 漆黒(12.4㎡):小規模でも最適寸法を実現

鮨 漆黒は、東京都港区六本木に位置するわずか12.4㎡(約3.75坪)という極小規模の寿司店です。「静寂の空間」をテーマに、壁面と天井、カウンター天板など、カラースキームをほぼ黒で統一しました。
小さな空間だからこそ、カウンターの寸法設計は一層シビアになります。限られた面積の中で、職人の作業スペースとお客様の居心地を両立させるため、ミリ単位での調整を行いました。
辺りが暗がりのため、自然と視線が向かうのはカウンターにぼんやりと照らされた鮨です。心地よい静寂に包まれ、鮨と向き合うための贅沢な没入空間をイメージしてデザインしています。
小規模店舗だからこそ実現できる、研ぎ澄まされた集中力を促す空間設計は、面積が限られていても高級寿司屋としての価値を十分に表現できることを示しています。カウンター寸法の最適化が、いかに空間体験を左右するかがわかる好例です。
詳細はこちら:https://rawman.co.jp/projects/sushi-shikkoku/

カウンター寸法を決める際の5つの注意点

ターゲット顧客層に合わせた座席幅の調整

カウンターの寸法は、どのような顧客層をターゲットにするかによって変わってきます。高級店で接待需要を狙うなら、一席あたり700〜800mmとゆったり設定することで、特別感を演出できます。
一方、ランチタイムに回転率を重視するなら、600mm程度のコンパクトな設定も選択肢に入ります。立ち食いスタイルや、カジュアルな雰囲気を打ち出す場合は、さらに狭めても問題ありません。
客単価と滞在時間の想定も重要です。高単価で長時間滞在してもらう業態なら、居心地の良さを優先した広めの設定が適しています。反対に、低単価で回転率重視なら、効率を優先したコンパクトな設定が合理的です。
ターゲットを明確にしないまま寸法を決めてしまうと、どっちつかずの中途半端な空間になってしまいます。開業前に、誰に来てほしいのかを明確にしておきましょう。
物件の構造上の制約と柔軟な対応

理想的なカウンター寸法を計画しても、物件の構造上の制約で実現できないこともあります。梁や柱の位置、給排水管の配置、電気容量など、さまざまな制約が存在します。
特に居抜き物件の場合、前のテナントの設備配置に引きずられることがあります。給排水の位置を大きく変更するには、追加の工事費用がかかります。予算との兼ね合いで、どこまで理想を追求するか判断が必要です。
スケルトン物件から作る場合でも、建物の構造によっては制約があります。柱が邪魔な位置にある場合は、カウンターの形状をL字型にするなど、柔軟な発想で対応しましょう。
内装デザイン会社に相談する際は、理想のイメージだけでなく、妥協できる点と譲れない点を明確にしておくとスムーズです。構造的な制約を理解した上で、最善の設計を提案してもらえます。
厨房機器のサイズから逆算する設計

カウンターの寸法を決める際は、使用する厨房機器のサイズを事前に確認しておくことが重要です。特にネタケースは、寿司屋にとって必須の設備であり、そのサイズがつけ場の奥行を決定づけます。
業務用のネタケースは、奥行600〜700mm程度のものが一般的です。このサイズを壁際に配置し、手前に職人の作業スペースを確保する必要があります。つけ場の奥行が1,200mm未満だと、機器を配置した後の作業スペースが狭くなってしまいます。
炊飯器、シンク、冷蔵庫など、他の厨房機器のサイズも確認しましょう。カタログで寸法を調べ、図面に配置してみることで、実際に設置可能かどうか判断できます。
理想のカウンター寸法を優先するあまり、厨房機器が入らないという事態は避けたいところです。機器選定と寸法設計を並行して進めることで、バランスの取れた設計ができます。
将来的な改装・変更を見据えた余裕の確保

開業時は想定していなかった変更が、運営を続ける中で必要になることもあります。メニューを増やしたくなったり、提供スタイルを変えたくなったりと、ニーズは変化します。
カウンター寸法に少し余裕を持たせておくと、将来的な変更に対応しやすくなります。例えば、つけ場の奥行を1,200mmではなく1,500mm確保しておけば、新しい厨房機器を追加する余地が生まれます。
座席幅も同様です。開業時は8席でスタートしても、繁盛してきたら9席に増やしたいと思うかもしれません。逆に、座席数を減らしてゆとりある空間にリニューアルすることもあるでしょう。柔軟性を持たせた設計が、長く使える店舗につながります。
ただし、余裕を持たせすぎると、初期投資が膨らんでしまいます。予算とのバランスを見ながら、どこに余裕を持たせるか優先順位をつけて判断しましょう。
コストバランスを考慮した優先順位づけ

理想を追求すると、予算がいくらあっても足りません。限られた予算の中で最大の効果を出すには、どこにお金をかけるべきか優先順位をつけることが大切です。
カウンター本体は、寿司屋の顔とも言える部分です。お客様の目に触れる部分であり、印象を大きく左右します。ここには予算を割いて、質の良い木材を使用することをおすすめします。
一方、バックヤードやつけ場の内部など、お客様から見えない部分は、機能性を確保しつつコストを抑える工夫ができます。厨房機器も、新品にこだわらず状態の良い中古品を活用することで、予算を内装デザインに回せます。
座席数を増やして売上を確保するか、座席数を減らして高単価路線を狙うか、という戦略も予算に影響します。ビジネスモデルを明確にした上で、それに合った寸法設計と予算配分を考えましょう。
内装デザイン会社に相談する際は、総予算を明示し、その中で最善の提案をしてもらうことが重要です。予算を伝えないまま理想を語っても、実現不可能なプランになってしまいます。

まとめ

寿司屋のカウンター寸法は、お客様の居心地と職人の作業効率の両方に影響する重要な要素です。高さ85〜90cm、奥行450〜500mm、座席幅600mm以上という基本寸法を押さえつつ、業態やターゲット顧客層に合わせた調整が必要になります。
カウンター内のつけ場は奥行1,200mm以上を確保し、職人が無駄なく動ける動線を設計しましょう。お客様側も、通路幅800mm以上を確保することで、快適な移動が可能になります。エントランスから座席まで、全体の動線を俯瞰して計画することが大切です。
RAWMANが手がけた鮨 四心、鮨 みつよし、鮨 漆黒の事例からもわかるように、限られた面積の中でも最適な寸法設計と空間演出によって、お客様に特別な体験を提供できます。
カウンター寸法は、一度施工すると簡単には変更できません。開業前にしっかりと計画を立て、後悔のない店舗づくりを目指しましょう。株式会社RAWMANでは、寿司店を含む飲食店の内装デザイン・施工を一貫してサポートしています。カウンター設計についてお悩みの方は、ぜひお気軽にご相談ください。

